Mother's Day2025 執筆者インタビュー①
- Maco Yoshioka
- 2 日前
- 読了時間: 8分

止まっていた時間が、また動き出した
執筆者 阿部京子さんインタビュー
聴き手 吉岡マコ
この春、シングルマザーズシスターフッドのMother’s Dayキャンペーンが5周年を迎えます。この節目の年にあたり、これまでに実施してきた8回のキャンペーンでエッセイを執筆してくれたシングルマザーたちの「その後」に耳を傾ける、スペシャルインタビュー企画を実施しました。
トップバッターとして登場してくれたのは、これまでに3本のエッセイを執筆してきた阿部京子さん。9歳の女の子と、6歳の男の子を子育て中のワーキングマザーです。
最初のエッセイ発表から約1年半。その後の執筆も含め3回にわたりエッセイ作品を通して言葉を紡いできた京子さんに、あらためてそれらを読み返してもらい、当時の自分、そこからの変化、そしてこれからのことについて、じっくりお話を伺いました。
ぜひ、執筆されたエッセイと共に、ご覧ください。
▼2023年12月 「それでも、私は生きていく。」 https://www.singlemomssisterhood.org/post/giving-month2023-essay6
▼2024年5月 「独立するの?しないの?」
▼2024年12月 「走る体から蘇る記憶」 https://www.singlemomssisterhood.org/post/giving-month2024-essay2
京子さん、この度はインタビューにご快諾いただきありがとうございます! どの作品にも、その時々の京子さんの視点や葛藤が、そのままのかたちで丁寧に綴られています。 今回は、それぞれの言葉をあらためて読み返しながら、京子さん自身が何を感じ、どんな変化を経験してきたのかをじっくりと伺いたいと思います。
過去に執筆したエッセイを読み返してみて、どんな思いが湧いてきますか?
世界が灰色に見えていた
最初にエッセイを執筆した頃を思い出すと、世界は灰色に見えていました。自分のことを「不遇な人」と認識していて、自信も気力もなかった。実は執筆に応募することもためらっていました。ひとりで2人の子どもを抱えながら仕事もして、生活も回せていなかったので。
書くことのハードルを越えられた理由
エッセイという「作品」を作りあげるという作業は自分にはすごくハードルが高いことに感じていました。それでも応募することにしたのは、グループリフレクションで一緒だったKさんが以前のキャンペーンですでに執筆していたことがきっかけ。身近な人がそういう機会に飛び込んでいることに触れて、一気にハードルが下がりました。
何かを変えたいというほのかな思い
本当にできるのかなという不安もあったけど「何かを変えたい」「前に進みたい」というほのかな思いが自分の中にあったことを、その時に自覚しました。自分の中に渦巻いている、誰にも話せないでいた気持ちを外に出したい欲求もあったことにも気づいた。このような機会が存在しなかったら、そういうことに気づくこともなかったと思います。
「当時の自分らしいな」と思うところ、「今の自分とは違うな」と感じるところがあれば教えてください。
恨みつらみでいっぱいだった
当時の自分を思い出すと、自らの境遇を嘆き、周囲への恨みつらみでいっぱいでした。今はそれが一切なくなりました。なぜなら耐え難い逆境を経験したことが、意外にも今の自分にポジティブな影響をもたらしたと実感を持って感じられたからです。自分でも成長したなと思います。
逆境を経験して得た視点の変化
ちょっと大げさなんですが、平和でぬくぬくしていたら絶対に辿り着いていなかった境地に今いるというか。一般的に不幸とされる経験も、そこからしか得られないギフトがある。強がりとかじゃなくて素直にそう思えるようになったことが一番の変化です。
エッセイを書いたときから現在までの間で、あなた自身に最も大きく起きた変化は何ですか?
キャリア観の変化
過去の私は、仕事至上主義で、まっすぐ上を目指していました。今は、仕事が全てではなく、もっと大事なことがあると思っています。上を目指すのではなく、横に広がっていきたいと、自己成長のイメージも変化しました。
今までしてきた調査・分析の仕事は感情よりも理性をメインで使うような仕事。理性は大切だけど、同じくらい感情も使えるような仕事をしたいという自分の欲求に気づきました。
今年の1月から新たなお仕事にチャレンジ
今年の1月から異動が認められ、社会課題を解決する仕組みを行政やNPO、スタートアップなどさまざまなステークホルダーと協働しながら作っていくような仕事に従事しています。
バウンダリーを引けるようになった
人間関係においては自分の問題と他人の問題を混同しなくなりました。これはエッセイ執筆の経験だけでなく、シングルマザーズシスターフッドで開催されていた感情のセルフケアの講座や、グループリフレクションの経験の恩恵でもあります。
人間関係の悩みがなくなった
自分の感情やニーズ(自分が大切にしたいこと)に目をむけるという考え方やそのスキルを身につける機会をもらって、人間関係の悩みがなくなりました。ネガティブなことを言われても、感情的に反応したり、心を閉ざすのではなく、一呼吸おいて、建設的なコミュニケーションに留まることができるようになりました。
ランニングの習慣を取り戻した
こうなりたいという未来のビジョンが明確になり、それに向かって習慣を身につけようと思うようになりました。その中でも、ランニングの習慣を取り戻したのは大きいです。若い頃にランニングは趣味でやっていたのですが「またやろう」という発想はなかったんです。
ポジティブな精神状態でいるためには、体が健康じゃないといけないと身をもって実感し、ストレッチや散歩では足りない、もう少し強度のある運動が必要だと腹落ちして、ランニングを再開しました。
エネルギーを作りだす習慣を続けたい
精神的にいちばん落ちていた時、すごくエネルギーレベルが低かったので「エネルギーをいかに減らさないか」という発想で、あまり動いていなかった。実は、強度のある運動をすると「エネルギーが作り出される」ということを身を持って体感して、それはすごいパラダイムシフトでした。「エネルギーを作り出す習慣を維持したい」と思って、運動の習慣を続けています。
もし今、改めてエッセイを書き直すとしたら、書きかえたいところはありますか?
とくにありません。「下手だな」とは思うけど、それはそれで、その時の自分の大事なスナップショットだと思っています。
このキャンペーンに参加した経験が、あなた自身や周囲との関係性に与えた影響はありますか?
「自己表現する」ということを初めて知りました。そもそも、自己表現したいとう欲求もなかった。音楽やダンスをやっていたことはあるけれど、自分らしさよりも上手さの方が大事だと思っていました。エッセイ執筆を通して「自己表現」というのは面白いなあと。自己理解が段違いに深まるから。
人からフィードバックをもらって、さらに自己理解が深まることを経験して、そこが日記とは違うところですよね。誰からも反応がなかったら、面白いとは思わなかったかも。エッセイを作り上げる過程で、校正者からの問いかけをきっかけに、「私ってそういうことを思ってたんだ」と気づいたり。
読者からは、意外とお決まりの褒め言葉(文章が上手など)が多くて、めちゃめちゃ刺さるフィードバックをもらうことは少なかったのですが、実は、とある人とやり取りしていた中で、思いを込めて紹介をしたら、思いのこもった熱いフィードバックをもらえたことがあって。そういう、深い心の交流とか、豊かなつながりとか、そういうことを自分の人生でもっと増やしていきたいと思いました。
エッセイを書いた時の自分にメッセージを送るとしたら、どのような言葉を伝えたいですか?
「何を書いてもいいよ、どんなあなたでも大丈夫!」
これからの3年間で、あなた自身が大切にしたいこと、また実現したい夢や目標があれば教えてください。
人との繋がりかなぁ。仕事でも、子どもまわりでも、なるべく心が通ったつながりを作っていきたい。それが自分の人生を豊かにしてくれるから。それから、ずっと海外に住んでみたいという夢がありながらまだ実現していなかったので、いつか海外に駐在もしてみたいです。
このキャンペーンを通して、家族の多様性が社会にどのように伝わってほしいですか?
「社会に伝わってほしい」というよりは、シングルマザー自身が「社会からこうみられている」という刷り込みを捨てられるようになってほしい。心無いことを言う人も実際にはいるけれど、ほとんどの人は、他人のことなんて気にしてない。どんな自分でも自分を肯定できた時に、社会の多様性が実現できるのではと思っています。

京子さん、ありがとうございました!
「まさに、3回かけて、ホップ、ステップ、ジャンプという感じで、確実に浮上できた実感があるので、この機会が本当にありがたかった」
と最後にしみじみ語る京子さんの笑顔が印象的でした。インタビュー当日は、子どもたちも撮影に協力してくれて、三人の笑顔をカメラにおさめることができました!
これからも京子さんの人生を応援しています!
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最後までお読みいただきありがとうございました。このような支援活動に共感してくださった方、ぜひ応援のご寄付をお願いします。いただいたご寄付は、シングルマザーのセルフケア講座や表現による自己の回復プログラムを継続するための運営費として大切に使わせていただきます。こちらの寄付ページで受け付けております。
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