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Mother's Day2024 エッセイ④



タイトル:独立するの?しないの?

執筆者:ひつじのおやこ


🎙️朗読はこちら(朗読:minori)

「独立するの?しないの?」/ひつじのおやこ

「ママ―、迎えにきて~!!」


私はパソコン作業の手を止め、立ち上がって、窓の外に顔を出す。

学校から帰宅した娘が、地上からこちらを睨みつけるように見上げている。


「は・や・くーーーー!!」


私は、やれやれと思いながら、サンダルをつっかけ、下まで降りていく。

私が近づいていくと、娘はにんまり笑って、


「ママって良いにおいがするから大好き~」


と言いながら、私のおなかにぎゅーっと顔をうずめてくる。

私も同じくらいの力を込めてぎゅーっと娘を抱きしめ返す。


「お疲れさま。お帰りなさい」


下校した娘がこのように私を呼びつける日は、ママに甘えたいのサインだということが、最初はわからなかった。


元気いっぱいに帰ってくる日もあるが、ぐずぐずモードで帰ってくる日の方が多い我が家の小学2年生。登下校のランドセルは重いし、学校の授業は6時間もあるし、毎日くたくたに疲れてしまうのだろう。


私は在宅でフルタイムの仕事ができる現在の環境を、心から有難いと思っている。


お帰りのハグをして、子どもの体と気持ちを受け止める瞬間は、母親である私の充足感を最高に満たしてくれる、一日のハイライトだ。


===


そんな娘が、2年生の春休みも後半に差しかかった頃、唐突に


「明日からおじいちゃんの家に行く!」


と宣言したのだ。


「突然どうしたの?」


私は冗談だろうと思った。


「だって家にいると、ママがあーだこーだ、マジで超うるさいんだもん!」


娘はそう言い放った翌日、おじいちゃんを迎えに来させて、本当に家を出て行ってしまった。


娘がいない今夜は、私と5歳の息子の二人きり。いつもだったら家族3人でわーぎゃー騒がしい食卓も、一人欠けただけで、やけに静かだ。いつになく黙々と食べる息子に話しかけてみる。


「ママってあーだこーだ、うるさいのかな~?」


「まあね、結構うるさい方だと思うよ」


即答する息子。


「そ、そうかな~!?」


努めて明るく聞き返す。


「『早くゴハンたべなさーい!』とか『早くオフロ入りなさーい!』とかね」


私の声まねをする息子はドヤ顔だ。


「でもさ~」


食い下がろうとする私に、


「こっちだって色々と大事なことをやってるんだよ」


容赦ない息子の言葉に、ぐうの音も出ない。

そうだよね、もう5歳だもんね。誰だって、大事なこと、色々あるよね。


===


春休みの最終日、娘は自宅に戻ってきた。

翌日、新3年生として学校から帰宅した娘の第一声は、


「私、今日から自分だけの部屋がほしい」


だった。いつになく意気揚々とした娘は、私が仕事でたてこんでいる隙に、自力でベッドを空き部屋に運びこみ、あっという間に自分の部屋を完成させてしまった。


娘の独立宣言は、親として喜ばしいことのはずだが、私の正直な気持ちは戸惑いと焦りだった。


2年前に夫が亡くなって以来、ご飯を食べるのもお風呂に入るのも寝るのもどこに行くにも、いつもいつも3人一緒だったというのに。


こうなったら、私だって、自分だけの大事なこと、やったる!もっと仕事をがんばって、大人の友人関係も築いて、いつか子ども達が私の手を離れるその日に向かって、私自身も独立する準備を今すぐ始めよう。


心の中で一人誓いを立てる。


===


しかし、それから一週間後、娘は


「やっぱりママと一緒に寝たいの」


といって、私と息子が寝ているベッドに潜り込んできた。

私は、口ではぶーぶー文句を言いながらも、内心ほっとして、満ち足りた気持ちを感じた。


私がいま大事にしたいこと。

それは、家族3人で一緒に過ごす瞬間をたっぷり味わい尽くすこと。

窮屈なベッドの中で、子ども達の呼吸と体温を感じながら、そんなことを思う。


というわけで、私の独立宣言はいったん保留ってことでよいかしらん?




Mother's Dayキャンペーン2024ご寄付のお願い
最後までお読み頂きありがとうございました。このエッセイは、Mother's Dayキャンペーン2024のために、シングルマザーのひつじのおやこさんが執筆しました。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心とからだの健康とエンパワメントを支援する団体です。ご寄付は、「シングルマザーのセルフケア講座」の運営費として大切に使わせていただきます。ご寄付はこちらの寄付ページで受け付けております。

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3 Comments


Guest
Jun 01

私にも同じくらいの娘がいます。一人でできる!って言い出したり、あまえんぼになったりするの、どこのお家も一緒なんですね。ひつじのおやこさん3人家族の姿を想像したら、なんだか楽しい気持ちになりました。

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子どもが離れていけるということは、帰れる場所があることが分かっているから、 そして、 しっかり見守ってもらえているという安心感があるから。 子育ては期間限定、自然と離れていくまでは、心ゆくまで一緒の時間を楽しみましょう!

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コメントありがとうございます。いつか離れていってしまうなんて、、泣けてきます。いつか子どもがわたしの元を離れていった後も、ソウルメイトのような関係性でありたいという願いがあります。 ひつじのおやこより

Edited
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