お腹の中からの命がけのメッセージ
執筆者:もこ
冷たい風がふいていて手が冷たく凍ってしまいそうな日でも、アスファルトから感じる熱風に圧倒され飲み込まれそうになっても、私たちは毎日同じ時間を公園のベンチで過ごしていました。ずっと同じ公園にいるのはきっと変に思われるだろうと思い、時間になると公園を変えます。塩おにぎりを人数ぶん、それと水筒をもっていきます。おやつは特別なときだけ。途中で水はなくなるので公園の水をのんで暗くなるまで外で過ごしていました。暗くなるまでの間にたくさんのお友だちを見送ります。おやつを食べて、眠くなってぐずる息子を自転車になんとかのせ、夕方のビル街をかけぬけます。そして、ピカピカのハイヤーの並んだエントランスをぬけ、コンシェルジュのいるマンションに砂まみれの服で静かに、息を殺してかえります。
冷たい風が厳しいある日、私の脚のあいだから何かなまぬるいものがつたっていくのをかんじました。止まらないそれはドクドクと流れてきます。世界がだんだんと白黒になっていくのがわかりました。急いでトイレに駆け込み、恐る恐る触ってみるとそれは真っ赤な色をしていました。お腹にいる長女からのSOSでした。ママもう頑張らなくていいよと涙ながらにいわれているようでした。
決意をし、その夜高速バスに幼い息子を連れて乗り込みました。トンネルをぬけるたびに、暗闇は深くなり、後悔・自責・恐怖、様々な思いが押し寄せ、ため息が止まらなくなりました。最後の長い長いトンネルをぬけたとき空が白んでいることに気づきました。故郷の風はとても冷たく耳がキーンとなりました。しかしそれはとても澄んでいて、息をするたびに新しい自分に生まれ変わることができる気がしました。
実家に帰った途端、嘘のように出血は止まりました。そしてあんなに大きかった血腫はいつの間にか消えてなくなりました。
今は、寒い日は家にいてみんなでみかんを食べて、ごろごろして過ごします。暑い日は家で涼み、休みの日は畑にいってみんなで野菜を作っています。公園にいくときは、子どもたちの大好きなゆでたまごやウインナー、トマトをお弁当に入れていき、家に帰りたくなったら帰ります。疲れた日にはレトルト食品もおいしくいただくし、ファストフードも楽しみます。
娘からのメッセージで気づくことや得たことは沢山ありました。
ひとり親になったからこそセルフケア講座に参加でき、そこで仲間と出会うことができました。そしてもっといろいろなことに挑戦してみたいと思えるようになり、開業をしました。
息子は、男女の平等や自由についてクラスのみんなにお話をするそうです。お話をするとお友だちに逃げられることもあるみたいですが、毎日大好きなピンクのTシャツをきて元気に保育園に通っています。
あの時の娘からのメッセージは、私たちは自由に生きていいし羽ばたいていいよ、とチャンスをくれるための命がけのメッセージだったのだと思います。
そう、肝心な娘ですが、兄よりもよくしゃべり、存在感たっぷりで大きくなっています!
Mother's Dayキャンペーン2021ご寄付のお願い
最後までお読みいただきありがとうございました。このエッセイは、Mother's Dayキャンペーン2021のために、シングルマザーのもこさんが執筆しました。このキャンペーンでは、ひとりとして同じ人はいない、個性あふれるシングルマザーたちのかけがえのない素顔を祝福し「自分を大切にすること」「セルフケアの大切さ」を呼びかけています。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心とからだの健康とエンパワメントを支援する団体です。共感し応援してくださる方にはぜひ、ご寄付をお願いします。ご寄付は、「シングルマザーのセルフケア講座」の運営費として大切に使わせていただきます。
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